中国・北京のショッピングモールにあるH&Mの店舗(2021年3月26日、写真:AP/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 ウイグル人の強制労働問題が米議会などで批判されている新疆コットン(新疆ウイグル自治区産の綿花)をめぐり、グローバル企業の言動が様々なハレーションを引き起こしている。

 新疆コットン排除を決めるメーカーに対して、中国官製メディアの煽動によって中国人消費者の間で不買運動が起きる一方、新疆コットン購入継続を表明し中国の政治的立場を支持するグローバル企業も出てきた。

 すでに米中の対立が価値観の戦争であることは、米中双方ともが認めるところだ。中国市場を取るか、西側の開かれた自由主義社会の価値観を取るか、という「踏み絵」をグローバル企業は否応なく迫られつつある。

バイデン政権も「ジェノサイド」認定を継承

 中国のウイグル人に対する弾圧について、民族絶滅を目的としたジェノサイドであるとトランプ前政権が認定したのち、人権問題を外交政策の重点に置くと表明したバイデン政権も同じ立場を継承した。

 3月30日に発表された米国務省による2020年度人権報告では、中国の人権問題について紙幅を大きく取り、特に新疆ウイグル自治区におけるウイグル人を中心としたムスリム弾圧について詳細に事例をあげて非難している。

 ブリンケン国務長官は「中国当局は、ムスリムを主としたウイグルのジェノサイド(民族絶滅)、およびウイグルその他の宗教と少数民族グループに対する監禁、拷問、強制避妊手術、迫害などの人類に対する罪を犯している」とコメントし、報告の中でも拷問の内容について、電気棒、水刑、殴打、レイプ、売春の強要、強制避妊手術など、身の毛のよだつような言葉で表現されていた。