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アリババ創設者のジャック・マー(馬雲)とソフトバンク創設者の孫正義(2019年12月6日、写真:ロイター/アフロ)

(文:樋泉克夫)

習近平政権への批判的発言を機に失脚したと言われる「アリババ」創業者のジャック・マー。独禁法違反容疑での捜査など露骨な圧力は、トップIT経営者からなるサークル「泰山会」にも影響を及ぼした可能性がある。

 2020年10月24日から2021年1月20日まで90日ほど公に姿を見せなかった巨大ネット・ビジネス「阿里巴巴(アリババ)集団」創業者の馬雲(ジャック・マー)。

 一般には昨秋の「時代錯誤の規則が中国の技術革新を窒息死に追い込む」との発言が、企業家としての彼の人生を失速させたと伝えられる。習近平政権は、この発言を自らの政策に対する「ノー」という意思表示と受け取ったからこそ、馬雲に対し断固たる処断を下したに違いない。

 それというのも馬雲の振る舞いは、建国100周年となる2049年に照準を合わせた習政権の超野心的世界戦略「中国製造2025」が目指す「製造強国」に、真正面から冷水を浴びせ掛けるような衝撃的内容を秘めていたと思えるからだ。

 馬雲に対する習平政権の厳しい対応は、馬の後ろ盾とされる王岐山国家副主席の共産党指導部内での影響力低下に連動しているとも伝えられる。だが、「習近平VS.王岐山」の権力争いが馬雲をめぐる一連の動き誘発したと考えるのは単純に過ぎる。

 やはり一連の事態の根底には、習近平一強体制による鄧小平式「社会主義市場経済」に対する大幅な見直しという狙いが、秘められているのではなかろうか。

「一帯一路」の先兵役だったのだが

 ここ数年の馬雲は、中華圏で強い影響力を持つ華人企業家――タイのコングロマリット「CP(正大)集団」の謝国民(タニン・チョウラワノン)、マレーシアの実業家・郭鶴年(ロバート・クオック)――と手を組んで、東南アジアにおけるネット・ビジネスの展開に力を注いでいた。

 謝も郭も共に開放直後の中国市場に積極参入したことで共産党政権と太いパイプを築き、以後、中国市場での影響力を背景に経営規模を拡大させてきた。彼らが共産党のみならず習近平国家主席とも極めて近い関係にあることは、つとに知られている。

 こと謝に至っては自らが率いるCP集団を挙げて、タイと中国の両国政府連携によるタイ国内の高速鉄道建設――東南アジアにおける「一帯一路」の柱――に企業家人生の総決算を賭けるとまで公言しているほどだ。

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