不動産価格の高騰が止まらないソウルの夜景

 それにしてもここ数年間、値上がりし過ぎた――。

 ソウルを中心とした韓国の不動産価格のことだ。政府は不動産対策に追い回されたが、「供給拡大」にかじを切ったとたんに、「不正投機問題」が発覚し、国民の怒りが爆発してしまった。

 政権末期に起きたこの問題は、今後さらに拡大することは必至だ。

「自分で買って住んでいるが、どうしてこの家が20億ウォン(1円=11ウォン)以上もするのか。異常としか言えない」

 2021年2月末、筆者が訪れたソウル龍山区のアパート(日本でいうマンション)で知人はこう話した。

 共稼ぎの知人は6~7年前、「ずいぶん高いけれど…」と思いながら8億ウォンでこのアパートを購入した。

 2017年5月の文在寅(ムン・ジェイン=1953年生)政権の発足後、予想もしなかったソウルの不動産高騰が始まり、今は20億ウォンを超えるという。

 別の江南(カンナム)地区の知人は最近、引っ越すことになった。賃貸で住んでいたアパートのオーナーが契約満了を機に自分で住むと言い出したからだ。

 子供が高校生で「名門校」や塾が集まる江南地区に引き続き住みたかった。近所で物件を探したが、賃貸物件はほとんどない。

 買うしかないとも思ったが、35坪の物件の価格が30億ウォンを超えると聞いて断念した。「3年~4年間で2倍以上になった」という。

 この2人の知人はいずれも大企業に勤務する40代で経済的には恵まれている。一人は、「想定外の」不動産急騰で自分の財産価値が跳ね上がり、一人は乗り遅れてしまった。

 一般の庶民から見れば、20億ウォン、30億ウォンなど想像もできない金額だ。