(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)
韓国の文在寅大統が大ピンチを迎えている。韓国土地住宅公社(LH)職員による土地投機疑惑が、文在寅氏本人と娘、夫人の弟の土地投機問題に飛び火している。野党「国民の力」と12日付の朝鮮日報は、文在寅一家の土地投機問題を批判するキャンペーンを大々的に展開しているのだ。
国民の党の疑惑追及に対して文大統領は、「みみっちくて、恥ずかしい」「選挙時期だから理解はできるが、ほどほどにしなさい」といら立ちを隠せずにいる。
文在寅氏やその政権は、あくまでも土地投機問題はLH職員限定で済ませようとし、文在寅一家に関するものは違法なことはないと抗弁している。
しかし、今の韓国国民、特に不動産を所有しない若者が怒っているのは、不動産価格が極度に高騰している中で、政権内部やその周辺の人々が不動産投機によって莫大な利益を上げていること、しかもそれが不正に取得した情報を利用するという“役得”で潤っているということについてである。法律に違反することはもちろんのこと、仮に違法でないように繕っても、不当と思われる手法で利益を上げている。そうした「不公正」がまかりとおっていることに憤っているのだ。
世論調査において文在寅政権に批判票を投じた人が挙げる理由は、「土地政策」が最も多い。その不動産政策で文在寅大統領自身が標的になってしまった。この土地投機問題は、次期大統領選挙にまで波及しかねない問題となっている。文大統領にとって、破滅の始まりとなる可能性さえ出てきている。
LHと地方自治体職員の土地投機は組織ぐるみ、政権ぐるみ?
韓国土地住宅公社(LH)や地方自治体の職員が新都市計画の情報を事前に入手し、不動産を購入して暴利を得ているとの疑惑が革新系弁護士会の暴露によって高まった。
政府が2018年から19年に第3期新都市に指定した地域では、政府の発表直前に土地取引が急増し、月間取引量が普段に比べ5倍近くに増えた地域もあったという。新都市予定地の大半がグリーンベルト(開発制限区域)で縛られているため、普段は取引が活発ではなかった。内部情報が漏れたということであろう。