3月11日、全人代の閉会式で拍手を送る習近平主席(写真:AP/アフロ)

 3月5日に北京の人民大会堂で開幕し、11日に閉幕した今年の全国人民代表大会(年に一度の中国の国会)は、香港問題に明けて、香港問題に暮れたような大会だった。「港人治港」(香港人による香港統治)から「愛国者治港」(愛国者による香港統治)へ、そして「一国二制度」(中国大陸の社会主義と香港の資本主義)から、限りなく「一国一制度」へ近づいたと、世界のメディアが報じた。

 だが、そんな香港問題の陰に隠れるように、粛々ともう一つの法律が改正されていた。1982年12月に施行された「中華人民共和国全国人民代表大会組織法」である。日本で言うと国会法にあたる法律だ。

胡春華副首相の「内堀」埋めるための法改正

 改正前と改正後のこの法律を読み比べてみた。新法では、第3条に「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想の指導により、憲法と法律規則に基づいて職権を行使する」という条文が加わるなど、いわば「習近平国会法」に換骨奪胎された格好だ。

 中でも最大の「仕掛け」は、下記の旧法の第14条がスッポリと消えたことだ。

<第14条 国務院総理と国務院のその他の組成人員の人選、中央軍事委員会の主席以外のその他の組成人員の人選は、憲法の関係規定によって候補を指名する>

「憲法の関係規定」というのは憲法第62条のことで、以下のような条文だ。

<第62条 全国人民代表大会は以下の職権を行使する。(中略)国務院総理の指名によって、国務院副総理、国務委員、各部部長、各委員会主任、審計長、秘書長の人選を決定する>

 つまり、旧法を読む限り、国務院副総理(副首相)の決定権は、全国人民代表大会に属している。