鎌倉幕府最初の政治の中心地となった大蔵幕府(大蔵御所)跡。

歴史作家の伊東潤と歴史家の乃至政彦。伊東が乃至の才能を見出し、共著を出版してから今まで交流がある二人。対談の最終回は今後注目したい歴史人物について。乃至が最新刊『謙信越山』からの人物をあげるが、伊東は? さらに今後の大河ドラマ、2022年「鎌倉殿の13人」、2023年「どうする家康」について、専門家ならではの見所に注目。(JBpress

『謙信越山』発売記念:伊東潤×乃至政彦対談(1)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64287

『謙信越山』発売記念:伊東潤×乃至政彦対談(2)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64288

『謙信越山』発売記念:伊東潤×乃至政彦対談(3)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64392

今後注目の歴史上の人物は?

――伊東先生は『天下大乱』の新連載のほかにも、3月には『覇王の神殿 日本を造った男・蘇我馬子』を上梓されますが、今後、おふたりが書いてみたいと思う歴史上の人物や、注目している人物はいらっしゃいますか?

乃至 私は今回、『謙信越山』にも登場してもらった小田氏治【※1】と里見義堯(よしたか)【※2】が魅力的に思えてきて、このふたりを探っていきたいと思っています。

伊東 やけにマイナーな人物に注目しましたね(笑)。

乃至 このふたりに関しては、一代記というか、伝記みたいなものを見かけないんですよね。

伊東 里見氏の研究は、一次史料が少なくてたいへんだと聞いたことがあります。

乃至 里見氏を理解すると、おそらく当時の関東のわかりにくい部分が、意外とあきらかになるかもしれないな、と。特に義堯なんかは非常に個性的で、自分で「副将軍」と名乗ったりとか、不思議な部分が多々あるのでぜひ探っていきたいです。

※1 小田氏治『昨今では「常陸の不死鳥」の美称で讃えられるが、これと同時に「戦国最弱の武将」と酷評されることも多い。実際、氏治は重要な会戦で大敗することが多く、何度も拠点を奪われている。それでも立ち直りが早いことから、人柄がよく、領民から愛される呑気なバカ殿さまのように連想されることが多いらしい。ただ、氏治はそれほどわかりやすい無能ではない。『謙信越山』第5節 小田氏治という男(前編)より

※2 里見義堯『上杉謙信の父・長尾為景が越後の統制を固めている頃、房総半島に関東屈指の雄将が独立を果たした。「関東無双の大将」を謳われる安房(千葉県南部)の大名・里見義堯である。(中略)安房里見家は、鎌倉公方奉公衆の一員である。奉公衆とは、公方に直属する側近たちで、里見家は代々にわたり、鎌倉公方・足利家の近習として仕えてきた。『謙信越山』第3節 里見義堯という男(前編)より

伊東 私は最新作『覇王の神殿 日本を造った男・蘇我馬子』について一言。

 私が掲げるテーマの一つに「この国を造った男たちを描いていく」というものがあります。そのテーマに沿った作品としては、『江戸を造った男』『修羅の都』『威風堂々 幕末佐賀風雲録』(2022年初頭発刊予定)といった作品が挙げられますが、それでは、この国を最初に造ったのは誰かと思い、調べていくと行き着いたのが蘇我馬子だったのです。

 これまで蘇我氏の物語としては、四代入鹿と中大兄皇子らの時代を描くものが多かったのですが、あえて主人公に馬子を据えることで、豪族たちの集まりでしかなかった大和朝廷が、国家というものにまとまっていく過程を描きたかったのです。

 また今年7月に発売予定の『琉球警察』という作品では、戦後沖縄の土地問題とか日米協定の問題といった政治絡みの問題を扱っています。こうした問題は小説として忌避されやすいのですが、それをいかに一気読みさせるか。ベテランとしての腕が問われるところです。

 11月には、源頼朝と政子のデュアル視点で鎌倉幕府草創期を描いた『修羅の都』の続編で、頼朝の死から承久の乱までを書いた『夜叉の都』を上梓する予定です。