(高橋 義明:中曽根平和研究所・主任研究員)
変異株はイギリス株を中心に日本国内にも入り込み、現在、国内20都府県に拡散している。神戸市長は2月19日以降の新規感染者の半数以上が変異株と報告している。感染症の専門家だけでなく、政府・自治体も感染力の強い変異株が今後の日本における感染者数の推移に大きな影響を与えると懸念し、今般の首都圏における緊急事態宣言の再延長の一因となった。
本稿では、変異株の国内侵入を見逃した検疫段階での構造的問題について検証し、今後の対応策を検討してみたい。
問題1:海外からの受入制限の緩和による往来の増加
海外からの渡航者受入制限は、昨年(2020年)2月の中国湖北省からの入国拒否に始まり、7月初まで順次、入国拒否国を増やしていった。
日本政府はその方針を7月末から転換する。7月29日にタイ・ベトナムに対するレジデンストラック(出国前検査証明、日本側受入企業・団体が作成する「誓約書」の提出をもって日本到着時の検査を免除)の開始以降、9月1日に再入国許可者の入国再開、10月1日にビジネス上必要な人材、留学・家族滞在などの新規外国人入国再開、11月1日に日本人・在留資格者および短期出張者の空港検査免除など、政府は海外からの受入制限の緩和を進めてきた。
再び日本政府が変異株確認国からの帰国者に対するホテル停留など制限強化に大きく動き出したのは、空港検疫で変異株感染者が明らかになった12月25日の翌日26日だった。