今回の事件は一過性の可能性も

 今回の事件を教訓にヘッジファンドは個人投資家の奇襲に耐えられるよう、(1)カラ売り比率の高い銘柄への警戒、(2)1社のカラ売りに偏らないよう、ポートフォリオを分散、(3)融資枠等の設定により、緊急時の流動性を確保、といった対策を取り始めている。

 一方、掲示板を通じて買いを推奨したとされるギル氏は、複数の投資家から損害賠償請求の訴訟を起こされており、手数料無料を謳うスマートフォン専業証券会社のビジネスモデルに関してもSECや議会の調査が進められている。これらにより、SNSを通じた個人投資家の共闘や、投機的行為に一定の歯止めがかけられる可能性がある。

 以上の状況を考慮すると、SNSで情報交換をし、スマホを使ってゲーム感覚で証券取引をする個人投資家勢の動向は今後も無視はできないものの、株価が今回ほど企業のファンダメンタルズから乖離して暴騰し、カラ売り筋が巨額の損失をこうむるような事態は、そう頻繁には起きないように思われる。

 仮にSNSを通じた共闘がまた起きたとしても、今回損失をこうむった個人投資家は早めに逃げようとするだろうし、他方、今回パターンを学習したカラ売り筋は、新たなカラ売りのチャンスとして、株価の一過性の高騰を手ぐすね引いて待ち受けるかもしれない。

 なお値幅制限のある日本では、ここまで極端な暴騰は起こりえない。今回の事件は、ダイナミックで投機的な米国株式市場の一端を垣間見せたものといえるだろう。