暴騰はゲリラの奇襲

 今回の事件が起きた要因の一つは、ゲームストップ株のカラ売りが異常に多かったことである。カラ売りをした場合、決済日(約定日の2営業日後)に株式を買い手に引き渡さなくてはならない。そのため株券を確保していないカラ売り(ネイキッドショートセリング)は禁止されている。これは自分の持ち物でない不動産を売る地面師と同じである。ところが今回のゲームストップ株ではこのネイキッドショートセリングをやっていた投資家が多数いたため、カラ売り勢が雪崩を打って手仕舞う事態になった。

 通常、浮動株の10パーセント程度のカラ売りが行われていれば、「踏み上げ」を警戒しなくてはならないが、ゲームストップ株はその比率が実に140パーセントに達していたのである。

 事件発生のもう一つの要因が、手数料無料のスマートフォン専業証券会社であるロビンフッド・マーケッツを使って、若者たちがゲーム感覚で株式市場に参入し、SNSを通じてゲームストップ株を共闘買いし、相場が前例のないほど暴騰したことだ。ニューヨーク証券取引所に日本のような値幅制限がなかったことも、暴騰に拍車をかけた。今回の事態は「市場の民主化」というより「ゲーマーの市場参入」といったほうが近いように思われる。

実は大儲けしたヘッジファンド、大損した個人投資家

 今回の出来事をもって「個人投資家がヘッジファンドを倒した」という報道やSNSの書き込みが多数ある。つまり、名もなき個人投資家が団結し、悪徳ヘッジファンドを倒した、といった勧善懲悪的なストーリーで語られるケースが多いのだが、事実はかなり違う。

 第一に、メルビンのようにゲームストップ株をショート(売り持ち)していたヘッジファンドもあったが、逆に株価が低すぎるとしてロング(買い持ち)にしていたファンドも多く、彼らは価格暴騰で濡れ手で粟の儲けを手にしたのである。