たとえばニューヨークのヘッジファンド、センベスト・マネジメントは今回の騒動で7億ドル(約740億円)儲けたことを明らかにしている。昨年12月末のデータを見ると、センベスト・マネジメントよりも大きいロングのポジションを持っていたファンドや資産運用会社が3つあり(フィデリティ・インベストメンツ、ブラックロック、バンガード・グループ)、明らかになっているだけでロングのポジションを持っていた機関投資家(ファンド、資産運用会社、金融機関等)の数は199に上る。

 第二に、株価が暴騰したのを好機と見て、新たにカラ売りをした投資家も多数いた。暴騰後でもゲームストップ株の取り引きの4分の1から5分の1はカラ売りだったことからこれが分かる。これら新たにカラ売りを始めた投資家は、株価が483ドルのピークから約1週間で53ドル台まで下落したので、大半が儲けを手にしたと見られる。

 第三に、株価の上昇が始まってから共闘に馳せ参じた個人投資家の多くは、その後の株価下落によって、相当な損失をこうむったことも間違いない。

自殺者も出したスマホ専業証券のビジネスモデル

 今回の騒動で最も問題視されているのが、掲示板であおられた個人投資家たちが使ったスマートフォン専業証券会社「ロビンフッド」のビジネスモデルだ。

 同社は、ブルガリア出身のCEOらが10年前の「ウォール街占拠運動」に触発されて創業し、金持ちから盗んで貧乏人に分け与える義賊を社名に使い、「株式市場を民主化する」と謳って、取引手数料を無料にしたスマホアプリを開発、大量の個人投資家を呼び込んだ。取引が完了すると画面に紙吹雪が舞ったりするゲームのような仕様で、コロナ禍によって巣篭り生活を余儀なくされ、失業保険や米政府による2回の現金給付も入った20~30代の人々を株式市場へといざなったのである。同社は2013年の創業以来、毎年2~3倍の勢いでユーザー数を増やし、昨年末時点で約2000万人のユーザーを持っていたと見られる。

 同社が取引手数料を無料化できるからくりは、ユーザーの注文を複数のマーケット・メーカー(証券会社やヘッジファンドなど、売りと買いの両方に応じる金融業者)に丸投げし、その対価としてリベートを得るビジネスモデルによる。同社は昨年1~9月期に4億6550万ドルのリベート収入を得たので、年額換算で6億2066万ドル(約656億円)になる。このリベートは、SEC(米証券取引委員会)が前々から問題視していた。

 何が問題かというと、注文を回してもらった業者が、注文の執行前に、注文情報を利用して自社の取引を行い、利益を上げる「フロントランニング」と呼ばれる違法行為を行なったり、それにともなってロビンフッドの顧客の注文を不利な価格で執行する「最良執行(ベスト・エクセキュ―ション)違反」を行なったりすることだ。ロビンフッドのユーザーたちは、株取引で手数料が無料になる代わりに、少々不利な条件で取引させられかねないことになる。こうした規則違反で、ロビンフッドや取引を執行するシカゴのヘッジファンド、シタデルは、過去に罰金を科されたことがある。