真実の上杉謙信とは?
謙信が妻帯しなかった、実子を作らなかった、養子たちが跡目争いをした、という複数の事象が奇妙な形で繋がり、やがて「生涯不犯」の伝説が定着した。そしてそこから、男色愛好説や女性説などの諸説が派生し、これらのイメージに親しむ現代人が、当時の史料を曲解して、また独自の歴史を紡ぎ出していく。
生身の人間が、神話のキャラクターへと変容する。歴史を見ているとこういうことが少なからずある。
虚像と実像を見極めるのは難しいが、焦ることなく結論を慎重に探っていきたい。個人の性的指向については尚更だ。
【乃至政彦】歴史家。1974年生まれ。高松市出身、相模原市在住。著書に『謙信越山』(JBpress)『平将門と天慶の乱』『戦国の陣形』(講談社現代新書)、『天下分け目の関ヶ原の合戦はなかった』(河出書房新社)など。書籍監修や講演でも活動中。昨年10月より新シリーズ『謙信と信長』や、戦国時代の文献や軍記をどのように読み解いているかを紹介するコンテンツ企画『歴史ノ部屋』を始めた。
【歴史の部屋】
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