サムスンなどグローバルに活躍する韓国企業もあるが、国に依存する経営者が多いと著者は語る(写真:AP/アフロ)

(Alex Lee:韓国ジャーナリスト)

 中国と日本の企業経営者は、米国の新大統領就任で米中貿易を巡る対立が緩和されれば、今年1年間、経済にとっては中国が最重要になると見ている。それに対して、韓国企業は東南アジアを中国に変わる市場として有望視している。その差は何だろうか。

 経済が回復する中国は素材・部品の強国である日本と産業上の関係が高く、中国の回復によって日本経済も恩恵を受ける。一方、消費財市場で韓流ブームが冷え、中国からの輸入が増えている韓国は、日本と比べ中国との産業上の関係は少なく、中国の景気回復の恩恵を得るのが難しい。

 イ・ジピョン韓国外国語大学・融合日本学科特任教授は1月13日、ロシアメディア「スプトニク」とのインタビューで、「韓国企業の年間域外投資額規模や増加率を見ると、最近はベトナムを中心とする東南アジアが中国を追い抜いた」と述べた。

 事実、韓国の毎日経済新聞、日本経済新聞、中国の環球時報が2020年12月、3カ国の主要企業経営者290人(韓国106人、日本84人、中国100人)を対象に経営・経済環境に対するアンケートを実施した結果、日本と中国の経営者が「今年、期待できる市場」として中国を選んだのに対し、韓国の経営者は「東南アジア」を選んだ。

 先のイ教授は、「日本と中国は多少補完的な関係があるが、韓国と中国は競合する部分が多々あり、中国経済の影響が違う。化粧品やバッテリー、半導体などを除くと韓国企業が中国に売るものはなく、その他の業種は撤収する雰囲気だ。韓国は中国から買うものがむしろ多くなっている」と語る。それゆえに、東南アジアに投資がシフトしているのだ。

 同じアンケート調査で、中国の経営者は米中貿易摩擦、日本の経営者は内需不振、輸出減少、米中貿易摩擦をそれぞれ今年1年の大きな不安要因に挙げている。一方、韓国は過度な国内規制と政策が上位の不安要因で、米中貿易葛藤は3番目だ。 韓国の企業家は、対外環境より国内規制を大きな不安要因と受け止めている。

 韓国の経営者が今回の調査で、2021年の経済の最も大きな不安要因として国内規制や政治・政策不安など国内的な問題を挙げているのは、韓国企業の独特な歴史と国家内での位相のためだ。 韓国人は企業で働き、企業から給与をもらって生計を維持し、貯蓄や投資によって資産を形成する一方、企業に対する潜在的な反感が強い。

 それは韓国の歴史に根ざしている。