東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長。2020年11月撮影(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 多くの“身内”も卒倒したようだ。東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長が12日に東京都内で行われた組織委の新年講演会に出席。開会まで200日を切る中、組織委の職員に向けて「さあ、いよいよ東京オリンピック・パラリンピックだ。」との演題で年頭のあいさつを行った。

 折しも世の中は新型コロナウイルスの感染拡大に神経を尖らせ、2度目の緊急事態宣言が首都圏の1都3県を皮切りに発令されているタイミングで、懸念され続けている医療崩壊も現実味を帯びている。年明けに行われた複数の主要メディア(共同通信や朝日新聞社など)による世論調査では、今年夏に延期された東京五輪の開催に国民の約8割が否定的な声を上げていることが報じられるなど、どう考えても前出の演題のように能天気な風潮にはなっていない。

 それでも森会長は「私がここで考え込んだり、迷ったりすれば、すべてに影響する。あくまで進めていく」と強調した上で「私の立場で今年難しいとは口が裂けても言えない」と不退転の決意をあらためて述べた。

世論調査にクレーム

 多くの人たちが、さらに耳を疑ったのは同会長が世論調査にイチャモンをつけた言葉である。

「世論調査を無視しろとは言わないが、世論調査にはタイミングと条件がある」とまくし立てた上で「今のコロナで、こういう騒ぎでやっている時に、『オリンピックどうですか?』と聞かれたら、何と答えますか? 答えようがないでしょう。まして一般国民が“明日、子供や孫の成人式が中止になった”“来月結婚式の予定をどうしようか”と、そういう時期になぜあえてこういう『五輪をやるべきか』『延期すべきか』『中止すべきか』という世論調査をするのか。世論の動向を見るのは大事なことだけど、これをこうして発表しなければならんのかなと。私には疑問がある」などとぶちまけた。

 森会長のこのコメントは、多くのメディアですぐに詳報され、ネット上でも猛烈な批判を浴びていた。当たり前であろう。

 同会長の言葉通り「世論調査にはタイミングと条件がある」ならば、大会開幕まで約半年に迫っているにもかかわらず、現在の状況は大会開催に多くの人たちから賛同を得られるタイミングと条件が揃っていないことを自ら白状しているようなものである。他にもツッコミどころが満載だ。