臨時国会閉会に際して記者会見に臨んだ菅首相(2020年12月4日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)

政府は何もしなかった3週間

 西村康稔経済再生担当相が新型コロナの感染拡大を食い止める「勝負の3週間」だと語ったのは、先月(11月)の25日だった。だが一体勝負のために何をやったのか。Go Toトラベルを中断したのか。Go Toイートを止めたのか。何もしてこなかった。12月14日の夕方、菅義偉首相はようやくGo Toトラベルを12月28日から2021年1月11日まで全都道府県で一時停止すると表明したが、不要不急の外出に対する自粛要請は今なおしていない。

 もともと勝負などまったくしていないのだ。西村氏というのは、いつも口先だけだ。しかも中身があった試しがない。結果、どうなったか。感染者数も、重症患者数も連日のように過去最多を記録している。

 ソフトバンク系列のIT企業「アグープ」がスマートフォンの位置情報を基に推計したデータを使い、読売新聞が都市部の繁華街や主要駅周辺の人出を分析している。その分析によると、東京の新宿・歌舞伎町や札幌・すすきの駅、福岡・博多駅では、翌週に数ポイント減った程度で、翌々週には微増している。名古屋・栄駅もほとんど減っていない。大阪・なんば駅だけは翌々週にかけて17ポイント減った。大阪府が12月3日に独自基準で非常事態を示す「赤信号」を出したからだと見られている。

そもそも不公正で、税金ばらまきのGo To事業

 Go Toトラベルも、Go Toイートも実に不公平な制度である。例えば、いま医療関係者や福祉関係者、公務員やスーパーの店員などは、ほとんどがGo Toトラベルを使えるわけがない。使える人は限定されている。しかもまったく使えない人がいる一方で、何度も使っている人もいる。

 私などは基礎疾患持ちの高齢者なので、この制度を使って旅行する気分にはまったくならない。恩恵を受けているのは、JTBなどの旅行業者や一部の高級旅館、高級ホテルと、その周辺の土産物屋だけではないのか。