ビーガニズムがブームで終わらない理由

 このようなビーガン市場の拡大に伴って、世界的な大企業もビーガンの存在を無視できなくなっている。もはや飲食業界で生き残るには、ビーガン対応メニューが不可欠と言えるほどだ。

 現に、海外のマクドナルドやバーガーキングでは、代替肉を使ったビーガンダブルチーズバーガーやインポッシブル・ワッパーといったハンバーガーが販売されているし、あのケンタッキーフラインドチキン(KFC)ですら植物性原料で作った「ビーガンチキン」をメニューに入れざるを得なくなった。

 その影響は、外食産業だけでなくスーパーにも及んでいる。筆者は最近までイギリスに住んでいたのだが、大手スーパーでは肉や乳製品の売り場が縮小する一方で、年単位ではなく数か月単位で、ビーガンフードの売り場面積が広くなってきていることを肌で感じた。

 なぜビーガニズムは一時的なブームで終わらず、ここまで継続的に成長し続けているのだろうか。人々がビーガニズムを選択する背景には、主に環境問題、アニマルライツ、美容、健康などが挙げられる。ちなみに、日本ではアニマルライツを理由にビーガンになる人が多いが、欧米では環境問題を理由にビーガンになる人が多い。

 アニマルライツで主に問題となっているのは、家畜を「モノ」として扱う飼育状況や、屠殺に対する倫理的な側面である。また環境問題については、畜産業と温暖化や水質汚染、熱帯雨林の破壊との関連が指摘されている。大豆産業も熱帯雨林の破壊の第二の要因となっているが、世界自然保護基金(WWF)によれば、その大豆の70~75%は家畜の餌となっている(WWFのレポートはこちら)。

 ただ、実際に人々がビーガンを選択する理由が単一であることは少ない。むしろ、それぞれの理由は親和性が高いため、複数の理由でビーガンを選択する人が多い。