「肉が筋肉を作る」の虚像

 2018年に米国で公開されたドキュメンタリー映画『ゲームチェンジャー スポーツ栄養学の真実』(原題“THE GAME CHANGERS”)は、実際にビーガンになったアスリートたちのパフォーマンスが飛躍的に向上した様子を実証的に描き、肉こそがパワーとスタミナの源だと考えられてきた既成概念を打ち砕いたことで話題を呼んだ。

 これまでスポーツ選手は多くの肉を積極的に食事に取り入れてきた。しかし最新の栄養学では、動物性たんぱく質が血流を滞らせ、パワーや持久力や弱め、疲労回復を遅らせるという皮肉な事実が科学的に証明されている。また、実際に多くのアスリートたちがその効果を体感するようになったという。彼らは異口同音に、植物性の食事に切り替えたことによって、劇的に持久力や瞬発力、集中力、疲労回復力が向上したと語る。

 ちなみに、ドキュメンタリーの中でビーガンアスリートとして紹介されていたのは、陸上の王カール・ルイス、「世界最強の男」と言われているパトリック・バブーミアン(世界記録保持者)、テニスで世界ランク1位のノバク・ジョコビッチ、F1で勝利数最多のルイス・ハミルトン、自転車競技でオリンピック銀メダリストのドッチィ・バウシュ、総合格闘家のネイト・ディアスなど枚挙に暇がない。

「肉が筋肉を作る」というセオリーは、もはや絶対的だとは言い切れなくなっている。このようにビーガニズムは、単なる一過性の流行やニューエイジ思想ではなく、いまや栄養学や医学に裏打ちされた合理的な選択だと言われているのだ。