「想像するのも恐ろしい」今年の収穫
それでも過去2年は、今年ほどの豪雨や台風被害は起こっていない。今年の収穫は、いったいどうなってしまうのか?
「それは、想像するのも恐い。少なくとも、今世紀に入って最悪の状態であることは間違いない。
ニュースでは、台風被害が大きかった地方に朝鮮人民軍を派遣し、復旧作業にあたっていると強調している。だが、平壌市民たちが噂しているのは、あの人たち(軍人)の食糧は、どうなっているのだろうということだ」
つまり、被災地域に派遣された朝鮮人民軍の兵士たちの食糧さえ、ままならなくなってきているというわけだ。
北朝鮮では、金日成主席が死去し、金正日(キム・ジョンイル)総書記の時代を迎えた1994年後半から1997年にかけて、3年飢饉が発生。数百万人が餓死したと言われる。これを北朝鮮では「苦難の行軍」と呼ぶが、金正恩時代にも、再び「苦難の行軍」が到来しつつある。
だが、1990年代の「苦難の行軍」の時は、やはり3年にわたった1950年代の過酷な朝鮮戦争を経験した世代が、まだ多く生存していた。そのため、苦境でも何とか生き抜くことができた。
ところが、国連人口基金(UNFPA)と韓国の人口保健福祉協会が今年7月に公表したデータによれば、北朝鮮の平均寿命は72歳。つまり、いまや朝鮮戦争世代の多くが、すでに物故者だ。
それどころか、「苦難の行軍」の時期に生まれ、栄養失調気味に育った世代が、いまの北朝鮮の若者たちである。もともとが虚弱体質だったり、身長・体重が劣っていたりする。
いずれにしても、2017年以降の国連による強固な経済制裁、今年の新型コロナウイルスに加え、豪雨と台風被害による未曽有の食糧危機が、北朝鮮を襲うことになる。日本も含めた関係各国は、「北朝鮮は果たしてもつのか」という議論を、そろそろ始めておくべきではなかろうか。