この、話を聞きながら進み、足りない部分は謙虚な気持ちで人に頼むバランス感覚も、彼女の成功を後押しする大きな要因となった。
「経営者だからといってすべてをできるようになる必要はなく、時には人に頼ることも必要だと思います」
システムに完成はない
こうして橋本氏は、2017年に「RECEPTIONIST」をリリースした。すると、彼女のアイデアは様々な企業に刺さっていく。橋本氏自身が広告塔になってブログを始めると、NewsPicksが注目、SankeiBizが連載を依頼するなどの幸運もあり、サービスの認知は急速に広まっていく。
RECEPTIONISTの大きな強みの1つは、多くの人に実際に触れてもらう機会があるシステムだったこと。システムを導入した企業を訪問した人が「受付に人を置く余裕はないけど、あのシステムなら入れられるんじゃないか?」「そもそもいくらなの?」と、見込み客に変わっていくのだ。
「呼び出したい社員の数が10名以下なら無料です。11~50名で月額5000円~と、スタンダードなプランでは1人100円くらいの金額感にしています。値付けは、小さな会社でも無理なく使えるようにと決めました。これが支持されたのか、創業5年目でシステムの利用企業は3000社以上に及んでいます。半年前は2500と話していたので、さらにここから伸びていくとみています」
そんななか、橋本氏は未来に関しても一言持っていた。彼女はことあるごとに「システムに完成はない」と口にしている。同社のシステム開発は、まだ始まったばかりなのだ。
「起業時は受付の効率化に重きを置いていましたが、現在は受付のデータを活用できないか、と考えています。例えば、訪ねてくる方の多さと営業成績は比例関係にあるのか、どなたが訪ねてきた時に営業成績が上がるのか、といったデータを蓄積し、社内全体に共有ができたら、新しい価値を提供できるかもしれません」
ニッチな分野で起業し、商品やサービスの活用場所を広げていく。これはまさに、ベンチャーが大きくなる時のパターンだ。現在、RECEPTIONISTは日程調整のシステムも開発し、リリースしている。考えてみれば、人と会う時も、名刺交換の時も、今の世の中は不便だらけ。ぜひこの分野が盛り上がり、シームレスに自社と人のオフィスが繋がる世の中になってほしいものだ。