「常々“これだけ様々なものがIT化されたのに受付の仕事は何も変わっていない”と感じていたんです。しかもこれまでのシステムは、訪問した側も、訪問を受けた側も不便なものでした」

 橋本氏を起業に駆り立てた理由がもう一つあった。“受付の苦労や努力はなかなかわかってもらえない”と痛感していたのだ。

「だからこそ、受付のIT化は私の仕事、私のキャリアがなければできない仕事だと思ったんです。受付は本当にニッチな分野で、どの場合にどう動くのが一番よいかは企業によってもケースによっても異なります。これは、様々な現場を経験した人間でないとなかなかわからないんです」

RECEPTIONISTの画面
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人に頼れるのは「いい経営者」

 どんな分野にも「これ何とかならないのかな?」と感じる不便な何かがある。ところが、実はこれが宝の山なのだ。成功に至るかどうかを決める乱数は“市場の広さ”と、不便の解消に必要な“専門性の高さ”だろう。市場が広く専門性も低ければ、ライバルが多くレッドオーシャンになる。市場が狭ければ事業規模は大きくなりにくい。受付のシステムは、橋本氏にとって幸運なことに、市場が広く専門性があり、しかもその専門性は橋本氏のキャリアがなければわからないものだった。

「資金を調達する時も、協力を仰ぐ時も“なぜ今、私がこの事業をやるのか”といったことを明確にする必要があります。私の場合、まさにこの事業を始める必然性があったのでラッキーでした」