C Channelの原宿オフィスで社員の誕生日に撮影した集合写真。皆で手で“C”のマークをつくっている。現在の若者は、動画を見る時も、働く時も“楽しさ”を重視しているさまがよくわかる
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 未来のビジネスモデルをいち早く展開し、先行者利益を得る「タイムマシン経営」を学ぶ連載。今回は国内人口の約6割が使用するLINEの生みの親であり、女性向け動画メディア「C CHANNEL」を運営するC Channel株式会社創業者の森川亮氏に話を聞いた。コロナ禍の影響をものともせず、2020年5月25日にTOKYO PRO Marketへと上場、直近時価総額は約240億円にのぼる同社に、自社事業の今後とマーケティングの未来像を訊ねると、そこからは、従来の広告モデルでは不可能だったアプローチが見えてきた。
(企業取材集団IZUMO)

仕組みはシンプル、「好き」の追求と「リアル」への密着

「C CHANNEL」は、F1層(20~34歳の女性)を中心に国内約2140万のフォロワー数を誇る“女性向け動画メディア”だ。

 大手出版社の女性誌は、長く、有名モデルやファッションの流行を生むプラットフォームとして機能してきた。一方、2010年代からスマホと4Gが普及し、若年層が「YouTube」などの動画を楽しみ始めると“ファッションやコスメの情報も動画で見たい”というニーズが生まれてきた。そこで森川亮氏は女性向けの動画メディアをつくった、というわけだ。

C CHANNELのトップページ。無料動画の視聴時間は年々増加、コロナ禍の影響で若者も自宅で過ごす時間が増えるなか、C CHANNELユーザーの81%が、増えた“おうち時間”を無料動画の視聴にあてていた

 さらに森川氏は広告の変化も感じ取っていた。今まで通りの広告では、消費者に“刺さらない”。ネットで情報を仕入れる世代は、何より「踊らされる」ことを嫌う。例えば若手の人気女優が“安さがウリ”の化粧品を「これいいよ!」と紹介しても、最近の若年層は「女優がこんなに安い商品を使ってるわけがない」と冷め、むしろ反感を持つことさえあるという。一方、「発信者が身近」で、かつ「発信者がその商品を本気で愛している」と、共感が生まれやすい。

「手前味噌ですが、例えば当社は『mamatas(ママタス)』という未就学児のお子様をお持ちのお母様向けに動画マガジンを展開しています。編集部のほとんどが子育て中のママ社員で、実際に使って便利だった商品や、簡単だった調理法などを紹介しています。ユーザーさんは、妊娠、出産、子育てといった同じ境遇を経験したお母さんから配信される情報だからこそ、安心し、共感しながら見るのです」(森川氏)

 その結果、モノが売れる。すなわち購買構造が“企業が広告費を投じてつくったイメージで買う”から、“本気でその商品を愛している人が多ければ買う”に変わりつつあるのだ。もちろんマス広告も“こんな商品を発売しました!”という情報を多くの人に知ってもらう場合などは有用な場合が多い。しかし今、それはトリガーであって、ヒット商品は無数の消費者の間から「これいいよ!」という声が湧き上がって初めて生まれるのだ。