新市場を開拓する経営者は、将来に何を見て起業したのか。第4回は、要潤さんのCMで知られ、2019年2月に上場を果たした「識学」の安藤広大社長に話を聞いた。(企業取材集団IZUMO)
識学で生まれ変わった「ゆるい」ベンチャー企業
心ある経営者が必ずしもいい組織をつくれるとは限らない。なのに日本では、組織づくりと、リーダーの人徳のようなものが混同されていて、組織をつくれないと人格的欠陥があるかのような評価を受ける。
そうではないのだ。識学の社長・安藤広大氏が話す。
「私が『識学』と出会って独立し、業績不振に陥っていた企業のコンサルティングを実施した時のことです。ネット回線利用者を獲得する企業で、社員数は120名ほど。インターネットで集客し、電話でクロージングを行っていました」
労働環境はよかったのに、皆が不満を持っていた。まず、サイトを作る人、サイトの広告の評価を行って、PDCAサイクルを回す人、電話営業を担う人、この部署を統括する人、ITシステムをつくる人――様々な登場人物がいて、同じ仕事のなかに責任が重複する人がいた。そこで、まずは誰の仕事なのかを明確し、全員が動けるようにした。次に、各人の責任に合わせた権限を与えた。
「しかもこの会社では、そもそも日次、週次、月次の目標がありませんでした。そこで目標設定し、目標に対しての過不足を日次で確認してもらい、週次で改善報告もしてもらったんです」
3カ月ほど経つと、この会社の業績は見事、上昇に転じていった。
「それまでは、率直に言うと伸びないベンチャー特有のゆるい雰囲気でした。でも、甘い会社、仲良しこよしの会社では、やはり利益が出ないんです。もちろん、企業が緊張感がある運営を始めると、必ず一部“うちの会社らしくない”“こんなチームじゃなかった”と言う方がいます。しかし、数か月後には圧倒的な収益を挙げるようになり・・・」
会社の“がん”は口をつぐむようになる。