人はどのような生き物なのか?

 しかし、ここで安藤氏にツッコミを入れてみた。いわゆる“軍隊のような組織”が理想なんですか?

「いえ、違います。世間で言う悪しき意味での“軍隊のような組織”は、上司が暴力的な言葉を使うなどして、恐怖が発生している状態にあります。しかも、統制の方法が感情や暴力です。一方で正しい組織は、組織に所属するメンバーが、ルールを破ること、目標を達成できないことに対しての恐れを持っています」

 人間は心理学的に、アメとムチ・・・つまり“報酬”と“何かを忌避する気持ち”で動く。そんななか、人を怖れ、感情的な言葉や暴力を怖れるのが、悪い意味での“軍隊のような組織”ということだ。

 しかし逆に、組織の末端にいる人間はどんなアメとムチで動くというのか? まず、アメについて聞いた。

「よく“モチベーションアップが大切”と言われますが、動機付けは、自分自身で行うものです。他者に“こうなれたらすごいね”と言われてモチベーションがアップした経験がある人は少ないはずで、自分が“こうなりたい”と思って初めて動機が生まれますし、自分がそうなりたいからこそ、継続的な努力がなされます。そして、動機は、物事を継続しているうちに自分が成長したり人に認められたりして生まれます。ここで勘違いされがちなのは、人は“動機があるから動く”のでなく、“動いているうちに動機が生まれる”ことでさらに動くようになるのです」

 だから、上司は部下を管理し、部下に「何ができないのか」「どうしたらできるようになるか」「どのような状態になったら“できている”のか」を認識させることが大切なのだという。「これを認識させた上で、部下が何かをできるようになると、部下は心の中で“できないことができるようになった”と成長を実感します。そして、これが正しいモチベーションを生むのです。

 そのためにも、しっかりとした管理が必要です。管理できていないと、部下の“できなかったことができるようになった”という成長の認識も曖昧になります」

 そして、できていないことがあれば、低い評価を下すことも重要だ。なぜなら、これがムチになるからだ。