海洋調査船「太陽号」(海上保安庁のサイトより)

 日本政府は、日本最南端の沖ノ鳥島周辺のEEZ内で、中国の海洋調査船「大洋号」が2020年7月9日から10日午前にかけてワイヤの類を引き上げているのを海上保安庁巡視船が確認した。

 その後、同調査船は、15日を除き18日午後5時過ぎにEEZ外に出るまで調査を行った。

 同巡視船は、無線や電光掲示板を使って中止を要請したが、調査船はこれを無視して14日までの6日間連続調査を行い、2011年以降の最長期間を更新した。

 ちなみに中国は、2019年1月にも海洋調査船「向陽紅1号」が同様な調査を行っている。

 日本政府は、調査船が科学調査を行っているのであれば、この海域での調査に同意を与えていないため、中国に対し直ちに中止するよう外交ルートを通じて要求した。

 これに対して中国は、沖ノ鳥島は島ではなく、EEZや大陸棚を主張することができない岩礁であり、日本の一方的主張は法的根拠がなく、従って科学的調査を実施するのに日本の許可は必要ないと、従来からの主張を繰り返したと言う。

 国連海洋法条約第121条に規定する「島」と「岩」の区別について、従来から議論がある。「島」であれば、領海、EEZ、大陸棚を主張する起点となるが、「岩」であれば領海しか主張できない。

 沖ノ鳥島が「島」であれば、日本は、同島周辺に200カイリのEEZや大陸棚を設定でき、中国は、日本のEEZで海洋科学調査を実施する場合は、日本の同意が必要になる(国連海洋法条約第246条2項)のである。

 国連海洋法条約第121条(島の制度)によると、島とは①自然に形成された陸地で、②高潮時に水面上にあるもので、③領海、接続水域、排他的経済水域および大陸棚を有する。

 岩とは①人間の居住または独自の経済生活を維持することができないもので、②排他的経済水域や大陸棚を有しない。