南シナ海でミサイル発射訓練を行う中国海軍(2019年、China Militaryより)

 イージス・アショアの配備を秋田県秋田市と山口県萩市にある陸上自衛隊演習場に限定したため、住民の理解が得られず、断念に追い込まれた。

 しかし、これは単に導入配備を断念したとか、安倍晋三政権の決断の誤りなどとは言っておれない重大なことである。

 医療崩壊のようにベッドが足りない、ECMOを操作できる医療従事者が少ないなどの声が関係者から上がってくると、自分の命にかかわる問題と国民はとらえ、早急に何とかしなければと政府が打ち出すあらゆる事柄を認める。

 こうして医療機器の導入や医療関係機関の充実、医療従事者の支援など医療体制の見直しに始まる全般について、与党よりもむしろ野党がここぞとばかりに党派を超えて政府を叱咤する展開が繰り返された。

 ところが、安全保障、中でも「国の守り」(国防)では憲法に始まる法体制の未整備、地方自治体の非協力と自衛隊員の募集難、兵器・装備の未充足、研究・開発への日本学術会議などの非協力、企業の防衛産業からの撤退などから、任務と隊員の負担は増えるが社会的には国家的な認知も尊厳も得られない若年退職の損耗品扱いである。

 極論すれば、国家の防衛を隊員の過負担に依存しながら、若年で退職させて何ら面倒を見ない日本である。

 国民も「われ関せず」で予備隊力はなく、「国防」はとっくに崩壊している。しかし、野党も知識人も知らんぷりだ。

 民主主義国家を自任する日本で、またシビリアン・コントロール下の自衛隊においては、防衛省・自衛隊の努力だけではいかんともしがたい問題である。

 安全保障、中でも国防問題は政府・与党だけでは進めない。野党の積極的な論戦参加と国民の理解・支援が欠かせないし、国土の荒廃を考えれば医療崩壊どころではないはずである。

 以下、個別的、具体的に何回かにわたって論述するが、初めはイージス・アショアの問題と関連して、日本の国会論戦と日本領土の認識から始めたい。