ソウルの地下鉄駅で、南北共同連絡事務所が爆破された場面をテレビで見る人(2020年6月17日撮影、写真:AP/アフロ)

(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)

 南北平和の象徴が、一瞬にして瓦礫の山と化した。

 6月16日当日、韓国メディアが公開した北朝鮮による南北共同連絡事務所爆破の映像は、まるでショーでも見ているかのようであった。文在寅政権が重視してきた南北関係がご破算になったことを国際社会にアピールするには、十分すぎるインパクトをもつ。

 それにしても、実に効率的なやり方ではないだろうか。この爆破での死者は、恐らく一人もいない。ということは、決行した北朝鮮にその火の粉が大量に降りかかってくることはない。その反面、韓国政府も今回ばかりは慌てている。それは無理もない。これまで韓国政府が注ぎ込んできた170億ウォン(約16億円)の税金が吹っ飛んだのだ。そのなかには、当然、私自身が絞り出してきた税金も含まれている。納税者として、決していい気分であるはずがない。