自治体ごとに違ったオンライン申請の態勢
この事例を通して見えてきたのは、新たなデジタル・ディバイドだ。今回は自治体によってオンライン申請への態勢が異なり、自治体間で大きな格差が生じた。
自治体によっては、人手と時間がかかりすぎるために、オンライン申請の受け付けを停止したところもある。ある自治体ではITを使ったサービスが提供されるが、別な自治体ではサービスが提供されないという状況が生じていることは、同じIT基盤を利用している上ではあってはならないことだ。
この問題の根本には、情報基盤の格差がある。例えば、マイナンバー、あるいはマイナンバーに紐付いた情報を利用する際には、自治体の機関内連携、すなわち他の機関との連携など取るにあたって条例の制定が必要になる。今回の特別定額給付金でも、機関内の他の情報と連携させたり、それらの情報を使って訂正したりすれば、条例の制定が必要になる場合が多いだろう。
ここで「多いだろう」と曖昧な表現をするのには理由がある。それは、これらの自治体の事務を遂行する前提となる条例や各自治体の条例の解釈に関する実態の把握が困難だからだ。個人情報保護委員会事務局が取りまとめた「個人情報保護条例に係る実態調査結果」では、都道府県が47、市町村が特別区も入れて1741、加えて一部事務組合などが1562あり、これらの全てが個人情報保護に関する条例制定と解釈運用に関する権限を持っている。情報基盤の一翼を担う制度一つをとっても、このように格差がある。