3、卒論に関する嘘

 小池氏は卒論に関しても嘘をついている。3月12日の都議会で、自民党の田村利光議員が、「(カイロ大学を)卒業したのなら、卒論を書いたのでしょうか? 書いたのならテーマをお聞かせ下さい」と質問したのに対し、小池氏は「卒論という制度は学部、学科によって異なる。自分が卒業した文学部社会学科には卒論はなかった。当時の同級生たちもそのように言っている。たぶん取材をなさったのは、別の学科の方ではないかと思います」と答えた。小池氏は以前、石井妙子氏の質問に対しても弁護士を通じて同様の回答をしている。

 これもまったく嘘だ。筆者は2018年9月17日にカイロ大学文学部社会学科を訪問し、小池氏が卒業したと称している1976年と同じ年に同学科を卒業した現役の社会学科の教授に会って、そのことを確かめた。同教授の発言は次のとおりである。

「カイロ大学文学部社会学科(1学年約150人)では、全員が卒論を書かなくてはなりません。4年生の1年間は卒論を書くためのプロジェクト立案、資料集め、インタビューなどに追われます。私の卒論のテーマは、『職業集団としての猿の調教師』で、分量はアラビア語で80~90ページでした。他の学生の卒論のテーマは、教育、社会統制、カイロの貧民街、犯罪学というようなものでした」。なお面談にはカイロで新聞社のリサーチャーを務めているエジプト人女性も同席し、私も彼女もそれぞれ面談記録を残している。

カイロ取材の際の筆者(黒木亮氏提供)

 小池氏は同居人女性が証言する通り、最終学年に到達していなかったので、卒論の有無を知らなかったのだろう。3月24日の都議会では、この点を三宅議員から再度尋ねられ、動揺していたのか、人に聞いて答えていたことを図らずも暴露するような答弁をした。これが小池氏の言うことが信じられない理由の3つ目だ。