国家情報院は、1961年 に朴正煕大統領により「国家安全企画部」として創設されたが、金大中拉致事件(1973年)、朴正煕暗殺事件(1979年)などの重大事件を引き起こしたことで、金大中政権時代には大幅縮小となり、「国家情報院」と名称変更されて大統領直轄下に置かれた。国家情報院は、縮小されたものの、今でも北朝鮮に対する情報収集に関しては優秀な情報能力を保持している。

 国家情報院の主な手段として挙げられるのは、ヒューミント(人的情報)、シギント(通信、電磁波、信号等の傍受情報)、オシント(報道などの公開情報)、そして友好国との情報交換であるが、特にヒューミントでは、同じ朝鮮民族という強みを活かし、脱北者や中国・ロシアの朝鮮族を介した広範な情報活動を展開している。最近では、2015年に北朝鮮当局にスパイ容疑で逮捕された韓国系米国人キム・ドンチョル氏(67歳)が2019年に解放後、米国CIAと韓国国家情報院のために働いていたと告白しており、北朝鮮に対する情報活動の一端がうかがえる。

情報分析の困難さ

 本来、情報というものは、不可視性、無形性、可変性、秘匿性、多義性という特徴を持ち、虚偽か真実か判断できないということがよく起こる。最近はITの急激な発展によって個人が自由に情報を発信できるようになったため、根拠の曖昧な情報やデマが大量に出回るようになって、一層、情報分析が複雑化した。

 ましてや北朝鮮は非常に厳しい情報統制下にある。こうした国において、正確な情報の把握が困難なことは言うまでもない。さらに難しくさせているのは、北朝鮮や中国、ロシアのような独裁国家では、今回のような指導者に関する虚偽情報をわざとリークすることがあることだ。なぜ、このような虚偽情報を流すのかというと、「普段は隠れている政敵をあぶり出す」「敵対国がどう動くのかを確かめる」「敵対国の情報分析の能力を探る」「流した虚偽情報の経路を確認してスパイを暴露する」などのためである。

 専門家といえども、こうした国に対して正確な情報分析を行うことは至難の業であり、しばしば誤った情報判断が行われることがある。