1956年(昭和31年)に着工した黒部ダム建設に伴う苦闘の歴史は今でも語り継がれ、映像化した作品も数多く作られている。なかでも破砕帯(はさいたい)と呼ばれる細かく砕けた岩と地下水を多く含む軟弱な地層を突破する話は有名で、今も関電トンネル(当時の大町トンネル)内には「破砕帯」の表示看板が掲げられている。「土木ウォッチング」には、その当時の工事の様子が、現在の写真とともに掲載されている。

現在(上)と工事中(下)の関電トンネル。トンネル内に響く排水の音が聞こえてきそうだ(画像提供:株式会社熊谷組)
「インフラ大図鑑」となることを目指し、今後100年間Webサイト「土木ウォッチング」を維持したいと語る東京都市大学の吉川弘道名誉教授

「土木ウォッチング」は、「構造学的な理屈抜きで、俯瞰・鑑賞することが大切である」「100年、200年先の未来に、最先端の技術とノウハウで先人がつくりあげた土木構造物を伝えていきたい」という吉川先生の強い想いから生まれたものだ。またFacebookページ「Discover Doboku 日本の土木再発見」(https://www.facebook.com/DiscoverDoboku)ともコンテンツを連携させている。

 冒頭の明石海峡大橋の塔頂部にたどり着いたとき、吉川先生は「先人が成し遂げた世界一の長大橋梁の建設技術にリスペクトの念を抱いた」という。「土木ウォッチング」に掲載されている写真から、こうしたリスペクトの念が沸き起こることもあるだろう。心に響く写真が見つかったなら、いつか訪問する日を楽しみに、「ステイホーム」を楽しむツールとしてぜひ活用していただきたいと思う。

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続:吊り橋のメカニズムを探る -明石海峡大橋による解説-
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インフラツーリズムの事例研究 -明石海峡大橋ブリッジワールド-
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青く光るカッターフェイス -深夜のアクアライン-
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東京電力 丸沼ダム -重要文化財に指定されたバットレスダム-
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関西電力黒部川第四発電所関電トンネル(長野県・富山県)
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