ビッグデータとAI(人工知能)を活用した素材開発、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)が世界的な潮流になっているが、めぼしい成果は出ていない(写真:新華社/アフロ)

期待を集めるMIもめぼしい成果はいまだなく

 マテリアルズ・インフォマティクス(MI)とは、人工知能(AI)・機械学習を含む情報科学、および情報処理技術をフルに活用して、新物質探索や材料開発を推進していく分野領域である。MIは、AI・機械学習の他にも、物性理論、実験シミュレーション、データベース、プラットフォームなど、多様な分野から成り立っており、実験と理論計算を繰り返す従来の材料開発の手法に比べて、材料開発のスピードと効率を飛躍的に高めることができる。研究開発に要してきた膨大な時間とコストを大幅に削減することができるのだ。

 MIは2011年に、当時の米国・オバマ大統領が提唱した科学政策プロジェクト「Materials Genome Initiative(MGI)」を契機に、注目され、急速に気運が高まった。その後、欧州でもMIの関連コンソーシアムが立ち上がり、中国、韓国でも国家プロジェクトとして推進するという目標が掲げられるなど、世界的な潮流として広がっている。ただ、現時点で当初、期待されていたような目ぼしい成果事例はあがっていないのが現状である。