表の分類3の中からお薦めのものを一つ紹介する。歴史的構造物でありながら、今も現役施設として稼働している丸沼ダム(群馬県利根郡片品村)である。

上空から眺めた丸沼ダム。バットレス構造がワッフルのように見える(画像提供:東京電力)

 丸沼ダムは1931年(昭和6年)に完成したバットレスダムだ。バットレスダムとは、水をせき止める遮水壁を、バットレスと呼ばれるコンクリートの柱と梁で支える構造のダムを指す。建設当時、コンクリートが高額だったため、コンクリート量を減らすことができるという点が重視されて採用された。しかし、施工が複雑なためその後あまり普及せず、日本国内では8基が建設されただけである。丸沼ダムはその貴重な実例だ。

 この説明は「土木ウォッチング」に書かれていたものを参考にした。同サイトは写真だけでなく、このような簡単な解説も追加されており、素人が見る際には大変参考になる。

 吉川先生が「土木ウォッチング」を開設した当初、思うように写真が集まらない時期もあったそうだ。そんな時、先生の熱意が伝わったのか、東京電力の担当者から何枚かの写真提供があったという。次のモノクロームの写真は、その中の1枚。丸沼ダム建設当時の様子がわかる貴重な写真である。

丸沼ダム建設当時の様子。組み上げられている足場は竹か木材か(画像提供:東京電力)

 ダムの構造としては時代に取り残された丸沼ダムではあるが、何回かの改修を重ねながらもいまだ現役だ。吉川先生は「東京電力が大きな労力をかけても丸沼ダムを現役で稼働させているのは、歴史的価値を考慮しているからかもしれない」とおっしゃっている。

黒部ダム建設の苦闘を忍ばせる現場写真

 新旧の写真を見比べる楽しみということでは、関電トンネルもお薦めだ。黒部ダムおよび黒部川第四発電所(黒四発電所)建設のために作られた、長野県大町市と富山県中新川郡立山町を結ぶトンネルである。