下の表では、検査数と感染拡大の度合いを整理した。もちろん感染者数は、検査をどの程度行うかで見かけの数値が変わるので、感染実態を正しくつかむのは難しい。その前提で、「陽性率」に加え「検査数/死亡者数」も見比べると、検査数の多い国々のうち、イタリア、アメリカ、イギリス、フランスは、日本と比べむしろ検査不足ともみえる。

 一方、オーストラリア、韓国は、明らかに日本より徹底した検査を行い、一定の成功を収めている。台湾は、検査数が欧米諸国よりはるかに少ないが、だからといってコロナ対策の「劣等生」でないことは言うまでもない。

 また、日本の場合、PCR検査は少ないがCTスキャンが普及しており、「重症者の見落としは相当程度防げている」との指摘もある。他国の取組に学ぶことは重要だが、単純に検査数だけ国際比較しても意味は乏しい。

【図2】PCR検査数の国際比較(4月26日時点)*上記出典より筆者作成
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 誤解を受けないように言っておくと、検査拡大は必要だ。現在は、本来なされるべき検査ができていない。

安倍首相の発言も結果的に“フェイク”に

 政府の説明によれば、1)医師が必要と判断した場合、2)感染者の濃厚接触者には、検査が行われることになっている。安倍首相は2月29日会見でこう表明した。

「お医者さんが必要と考える場合には、すべての患者の皆さんがPCR検査を受けることができる十分な検査能力を確保いたします」

 ところが、2カ月経っても、これが実現していない。医師が必要と判断しても保健所に断られる、断られないまでも何日も待たされる、といったケースが起き続けている。医療機関のホームページをみれば、「医師の判断だけで検査はできません」とわざわざ明記しているところもある。