関連して、「陽性率7%以上になると死亡者数が激増」との説も、テレビの情報番組などで盛んに紹介されている。これも、フェイクニュースの可能性がある。この説の元ネタは、各国データを解析した学術論文だが、査読前の段階の論文だ。公開されているpreprints.org 上では「致命的な欠陥」の指摘もあり、まだ広く一般に紹介すべき学説とは考えられない。
(参考)https://www.preprints.org/manuscript/202004.0374/v1
論文の学術的評価は専門家に委ねるが、私がみて論理的に理解できないのは、「PCR検査数と死亡者数には関係がない」、「陽性率と死亡者数には相関関係がある」としつつ、よって「PCR検査の拡充が急務」との結論が導かれる点だ。陽性率は感染者数/PCR検査数だから、「感染者数と死亡者数に相関関係がある」だけならば自明のことでないかと思う。
感染者数が多ければ検査数が多くなるのは当然の帰結
「日本のPCR検査数は突出して少ない」、「人口あたり検査数は欧米の10分の1」といった話は、もはや常識レベルになっている。だが、これもちょっと気をつけておくほうがよい。問題はデータをどう読み取るかだ。
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少し考えれば当たり前のことだが、検査すべき人の数は、感染が広がっている国ほど多くなる。欧米諸国の多くは、人口あたりの感染者数や死亡者数が日本とは桁違いに多いので、検査数も多くなるのは実は当然の帰結だ。「欧米は検査数が十倍」と賞賛すべきことかは疑わしく、そこから「日本の検査ポリシーが異常」との結論が導かれるわけでもない。