4月14日、ニューヨーク・クイーンズ区の青果売り場で買い物する女性。感染対策のため、近所への買い物にでも、多くの人がこのような重装備で出かけている(写真:AP/アフロ)

(谷町 真珠:在ニューヨーク記者)

 全米最大都市ニューヨーク市の自宅待機命令は4週目に突入した。多くの住民が在宅勤務に切り替え、交通渋滞も、通行人の姿も街から消えた。静まりかえった街並みに響くのは、耳をつんざくような救急車のサイレンの音だけ。

「今日は、昨日よりサイレンの回数が減った気がする」。他人と会う楽しみも、外食する機会もない生活のなかで、その日に聞いたサイレンの頻度で「明日への希望」を感じる。かつて「眠らない街」と呼ばれたニューヨークの住民は、今、そんな毎日を送っている。

「今後2週間、買い物に出かけるべきでない」

 米ニューヨーク・タイムズ紙は14日、新型コロナウイルス感染による死亡者数が1万人を超えたと伝えた。同市の人口は推定800万人超。単純計算すると、約800人に1人が新型コロナで命を落としたことになる。人口比率に占める死亡率は欧州最多のイタリアを超えた。

 同紙の報道は、コロナ感染の検査を受けることなく自宅などで亡くなった人も含めた数値だが、ニューヨークが世界的な「コロナ感染の爆心地」といわれるゆえんだ。

 ある住民は「まさか、買い物が命懸けの行動になるなんて考えたこともなかった」(56歳男性)と語る。何も大げさな発言ではない。住民は、不要不急の外出は禁止されていても、食料の買い出しや医薬品の調達は許されている。だが、米ホワイトハウスのコロナ対策チームの高官は4月上旬、「これからの2週間は、買い物にも、薬局にも行くべきではない」と警告したのだ。ある程度の買い置きがあったとしても、野菜類などは日持ちがしないし、普通に生活をしていると想定外のものが底をついたりするものだ。そうすると、スーパーやドラッグストアに足を運ばざるを得ない。