ソウル南方の京畿道・平沢にある在韓米軍基地キャンプ・ハンフリーで行われた米韓合同軍事演習の様子(2019年8月5日撮影、写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(加藤 博章:日本戦略研究フォーラム主任研究員)

 在韓米軍駐留経費負担交渉が暗礁に乗り上げている。2019年11月以降、米国と韓国は、第11次防衛費分担金特別協定(SMA)の締結に向けた交渉を続けてきた。しかし、2020年4月現在、交渉は妥結の気配を見せていない。

 ここでは、駐留経費負担交渉の概要を紹介し、これが今後の東アジアにおける安全保障環境と日本にどのような影響をもたらすのかを考える。

「米韓防衛費分担金特別協定」とは?

 そもそも、何故韓国は在韓米軍の駐留経費負担を始めたのだろうか。韓国が在韓米軍の駐留経費負担を始めたのは、1991年のことである。当時、冷戦は終結し、東アジアにおいても米国との2国間同盟の意義が問われ始めていた。こうした中で、韓国は米国をつなぎとめるために、在韓米軍の駐留経費負担を始めた。それが米韓防衛費分担特別協定である。

 協定の有効期限は、協定ごとに異なっている。2009年の第8次協定と2014年の第9次協定の有効期間は5年であるが、2019年の第10次協定の有効期間は1年であり、2019年12月31日に期限を迎えた。今回の交渉は期限の切れた協定を更新するものである。