京都府宇治市にある平等院

 東京都のコロナウイルス感染者数など、具体的な発表数値をもとに考える「データ駆動」型の検討と並行して、歴史的な事実という「データ」に学ぶ対策を文理両道で検討してみたいと思います。

 念頭にあるのは3.11以後の対策です。

 一方で、福島第一原子力発電所の水素爆発によって散乱した放射性物質の降下など、かつて存在しなかった状態については、空間線量の測定、体内被曝の予防や、ホールボディ・カウンターによる正確な診断など、新たな「データテイク」が労作されました。

 これに対して「想定の範囲外」の地震や津波については、シミュレーションなどで予測できることには限界があります。

 しかし歴史を遡れば現実に東北地方には周期的に大地震や津波が押し寄せていたことが確認されます。

 例えば史料に当たるなら、西暦869年グレゴリオ暦7月13日に岩手県沖の日本海溝を震源として発生したと考えられる「貞観の大地震」は、マグニチュードが8.3程度と推測される凄まじい大地震であったことが伝えられます。

 これを跡づけるには「ボーリング調査」が有効です。すなわち、三陸の海岸沿いのサンプリング・サイトを地下に向かってボーリング調査で調べれば、海砂や貝殻などの「津波堆積物」を確認することができる。

 つまり「地層」という形で、歴史が地球という書物に刻印され、記録が残っているわけです。

 東京大学理学部、地球惑星環境学科の茅根研究室は3.11以降、古代中世から明治以降の軍や国土地理院の地図、戦後のGHQ航空写真まで、様々な歴史的な資料を参照しつつ、同時代の物質科学的な分析と併用して、高度な知見を新たに得る貴重な研究を展開されています。

 今回の「コロナ・パンデミック」は3.11以来と考えるのが適切な「国難」、否、グローバルなクライシス、危機ととらえる必要があります。