この論考の筆者は、中国の対外戦略の分析を専門とし、コロラド州にあるセンテニアル研究所の研究員を務める中国系米国人学者、ヘレン・ローリー氏である。ローリー氏による論考の骨子は以下のとおりだった。

・中国の習近平政権は、「一帯一路」により中国製品の輸出や中国人労働者の雇用の拡大だけでなく、海外の自然資源や戦略的拠点の獲得を目指し、地政的な覇権拡大の目的を図っている。

・「一帯一路」にとってヨーロッパの要衝でG7の一員であるイタリアとの連携はきわめて重要であり、ヨーロッパへの進出と同時に米欧関係にクサビを打ちこむ目的にも沿う。

・近年、イタリアは経済成長率がゼロに近く、若年層の失業率は30%以上、対外債務がGDP(国内総生産)の130%に達する。政情も過去70年に65回の政権交代が行われるなど不安定をきわめ、対外的に依存する土壌が深かった。

・2018年の政変では、それまで無名の大学教授ジュセッペ・コンテ氏が首相となった。コンテ氏は自国経済の構造改革を忌避して、中国の投資に頼るという安易な道を選んでしまった。

・イタリアは米国の反対を無視して「一帯一路」に参加し、自国のインフラ全般に中国が関与することを許した。4つの港湾施設はその一部を中国の国有企業が保有、管理するなど中国依存を高めている。

・中国は、イタリア北部のロンバルディア州やトスカーナ州の自動車産業およびファッション、ハイテクなどの工業地域に集中的に投資した。その結果、イタリアと、同種の工業が盛んな武漢との関係が深くなった。

・イタリアは「一帯一路」に参加する前から、服飾製品の製造と販売の両面で中国との絆が太かった。現在、イタリア国内には約30万人の中国人が居住し、その90%ほどが服飾産業に従事している。