この時に駅員の対応などを以下に整理します。

 当時の私は、駅長室が「冤罪の温床」になる可能性を知りません。ただ、何らかのマニュアルは存在したと思います。駅員は最初1名でしたが、ヒアリングをしている間に4名が駆け込むように入っていたからです。逃走防止の意味もあったのでしょう。

 次に駅員のヒアリングですが、これはまったく中立ではありませんでした。最初から女性に「なにをされたんですか?」という聞き方だったので、強い違和感を覚えました。マニュアルに「女性の意見を優先して聞くように」とでも書いてあるのでしょうか。気の弱い人であれば、そのまま警察署に連行されて「終了」だったと思います。鉄道会社は、このようなマニュアルが存在するのであれば公開すべきではないでしょうか。

最終的にどうなったのか

 この日は結局、被害を訴えた本人がいなくなってしまったので、それ以上質問されることもなく、すぐに駅長室を出ました。

 ただ、当然ながら、私自身は「自分こそ被害者」という気持ちでした。そこで、どうしても釈然としなかったので、駅長室を出る前に、名刺を渡し、精査した上で報告がほしい旨を駅長に伝えました。それから10年が経過しますが連絡はありませんでした。

 事件当日は、ちょうど友人数名と会食をする予定があったので、待ち合わせ場所に急いで向かいました。参加者の1名にたまたま弁護士がいたので、私はことの顛末を説明しました。すると私は、弁護士からきつく忠告をされました。「駅長室に行ったら、普通はそのまま警察に連行されるのだ」ということでした。

 彼は私にこう教えてくれました。今後、同じような場面に遭遇したら、「駅長室には絶対行ってはいけない」、「警察官による任意同行には応じない」、「その場で、弁護士に連絡をする」。警察が強硬な姿勢なら、「特別公務員職権濫用罪で訴えると主張する」などです。

 結局のところ、理由はどうであれ駅長室に連れて行かれれば通常は“The END”なのでしょう。私はここ10年くらい満員電車には乗っていません。早朝はラッシュ時を避けて早く仕事に行くようにしています。夜は混んでいたらタクシーを利用するようにしています。

 最近では、痴漢冤罪事件に対応する保険も販売されています。万が一、電車内などで痴漢の疑いを掛けられたら、その場で弁護士に電話ができ、初動対応についてアドバイスが得られたり、裁判になった時に弁護士費用を補償してくれたりするものです。こういった保険を利用することも、痴漢冤罪から身を守るひとつの方法でしょう。

 しかし、まずは鉄道会社や警察に、無実の人を犯人にでっち上げようとする事案の調査をしていただきたいと切に願います。また自衛策としては、極力、満員電車に乗らないなどの習慣も必要ではないかと思います。