間もなく第2期政権発足から100日の区切りを迎えるインドネシアのジョコ・ウィドド大統領。写真は昨年11月、バンコクで開催されたASEAN首脳会議・関連会合の際のもの(写真:ロイター/アフロ)

(PanAsiaNews:大塚 智彦)

 インドネシア政府のヤソナ・ラオリ法務人権相がジャカルタ市民や人権団体などから一斉に批判を浴びる事態となっている。

 というのも、ジャカルタの特定地区をさして「犯罪者が多い街だ」と言ってみたり、国家汚職撲滅委員会(KPK)による与党党員への汚職容疑捜査を批判したり、管轄下にある入国管理局の容疑者に関する情報公開へ介入したことが次々と指摘され、「人権担当の大臣による人権無視や人権侵害事案である」として公式の場での謝罪や職務権限逸脱への説明が求められているのだ。

 2019年10月に成立したジョコ・ウィドド大統領による第2期政権で法務人権相として留任したヤソナ法務人権相は、ジョコ大統領の母体である最大与党「闘争民主党(PDIP)」所属であるばかりか、党首メガワティ・スカルノプトリ元大統領の側近として知られる弁護士出身の政治家である。

 それだけにマスコミや人権団体の集中砲火を浴びるヤソナ法務人権相の問題は、2月初旬で政権発足から100日のいわゆる「ハネムーン期間」を終えるジョコ・ウィドド政権にとっても打撃となっている。

 加えて、1月23日の記事でも触れたが、KPKが手掛ける汚職捜査で、事務局長の名前まで取り沙汰されている与党PDIPにとっても、「人権相による人権侵害問題」は頭痛の種となっている。

(参考記事)インドネシア、牙抜かれた捜査機関が与党に逆襲
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59078

貧困、犯罪に関わる差別発言

 問題となっている発言はこういうものだった。

 1月22日、ジャカルタでのスピーチでヤソナ法務人権相は「タンジュン・プリオクで生まれた貧しい子どもは暴力的で罪を犯すが、メンテンで生まれた裕福な子どもはそうはならない」と発言した。