(李 正宣:ソウル在住ジャーナリスト)
総選挙を控えて北朝鮮との関係改善に全力を注いでいる文在寅(ムン・ジェイン)政権が、北朝鮮に対する個別観光を全面許可しようとして米国側と対立している。
北朝鮮観光事業を進めようとする文大統領の発言に対し、ハリス駐韓米国大使は「米国と協議すべき」と主張。するとハリス大使に向かって文政府と与党からの糾弾が殺到し、文政権支持者たちの間でにわかに「反米感情」が高まっているのだ。
北朝鮮個別観光を実現させたい文政権
事の発端は、1月14日、文在寅大統領は年頭記者会見で、米朝対話の進展とは別途に南北間の協力を模索する意思を明かし、具体的には「国際制裁に該当しない」として、「対北朝鮮の個別観光の許可」を取り上げたことだった。
実は、2008年7月11日、金剛山(クムガンサン)観光に参加した主婦のパク・ワンジャ氏が、北朝鮮軍の射撃によって死亡するという事件があった。これを契機に、韓国政府は韓国人の北朝鮮観光を全面禁止しているのだ。
現在も北朝鮮はこの事件に対する一切の謝罪を拒否しており、韓国国民の間では金剛山観光再開に対する賛否が分かれている。だが、文在寅政権は北朝鮮の個別観光を推進する考えを明確にし、韓国国民とメディアに向けては「米国側も支持を表明した」と、あたかも国際社会からも理解を得られているように主張した。