左からエリザベス2世女王、メーガン妃、ヘンリー王子(2018年7月資料写真、写真:AP/アフロ)

(佐藤 けんいち:著述家・経営コンサルタント、ケン・マネジメント代表)

 昨年(2019年)12月の保守党の圧勝により、今年1月末の「EU離脱」がほぼ確実になったと思い込んでいた矢先、さらに衝撃的な「離脱」のニュースが世界を駆け巡った。

 英国王室で王位継承第6位のヘンリー王子(通称、ハリー王子)とメーガン妃の夫妻が、王室から半独立するという意向を一方的に表明したのだ。今年1月8日のことである。

 それからわずか10日後の1月18日、電光石火の勢いでエリザベス女王が決断を下した。今年の春には、ヘンリー王子夫妻は一切の公務から退き、敬称(His & Her Royal Highness)は廃止、王室助成金も受け取らないことになったのだ。

 だが、ヘンリー王子とメーガン夫妻は、王族からは除籍されても、サセックス公爵夫妻の称号の使用は許されるようだ。夫妻はすでに「サセックスロイヤル」で商標登録を済ませており、この無形資産がカネを生みだすので経済的に自立することは十分に可能だと見られている。

 ヘンリー王子夫妻による一方的な「独立宣言」に対して、現在93歳の祖母エリザベス2世女王は、きわめて厳しい処断を下した。肉親として孫をかわいいと思うことと、家長として王室を守ることは別というメッセージが内外に示されたのだ。ヘンリー王子夫妻の王室からの「離脱」が決定的となった。

 女王としてはさぞかし苦渋の決断であっただろう。だがもし、この冷徹で果断な処置がなされなければ、それこそ「王室解体」の導火線となったことは容易に想像できる。中途半端な措置をとった場合、いいとこ取りで虫が良すぎるとして英国国民からの王室批判が増大し、ひいては王室不要論を噴出させかねないからだ。王室解体を絶対に防がなくてはならないという、強い意志の現れであったと評価すべきであろう。

 とはいえ、この決断が吉と出るか凶と出るか、結論を出すのは時期尚早だ。この件がどう展開していくのか、注視していく必要がある。

ヘンリー王子夫妻の「離脱」は他人事ではない

 今回のヘンリー王子とメーガン妃夫妻の行動にかんしては英国内でも賛否両論があり、それぞれもっともだと思われるが、興味深いのはともにアングロサクソンと見なされる英米で反応の違いが大きいことだろう。英国から独立して共和制として出発した米国と、一貫して立憲君主制を維持してきた英国との違いが反映したといっていい。