また同報道官は、在韓米軍駐留経費問題についても次のように語った。「米国民は韓国防衛のために戦い、多くの生命を失ってきた。多額の経費も払ってきた。米国民はいまも韓国民を守るために死をも覚悟している。韓国側は米韓同盟のこうした歴史を理解してほしい」。つまり、米国が韓国に、在韓米軍のための経費負担増を求めるのは当然だというわけだ。

安重根もはやしていた口ひげ

 韓国側はハリス大使の口ひげが日本の朝鮮総督や軍人を想起させると非難する。だが、ハリス大使自身が指摘したように、韓国の歴史上の著名な人物の多くが人目を引く口ひげをはやしてきた。

 韓国事情に詳しい日本の龍谷大学の李相哲教授は、日本テレビの討論番組(1月20日放送)で、「韓国でも独立運動の活動家らが口ひげをはやしていた。伊藤博文暗殺で知られる安重根もそうだった」と語った。

逮捕後の安重根(1909年撮影、出所:Wikipedia

 安重根は1909年10月に当時の北満州のハルピン駅で、日本の元首相で朝鮮総督を務めた伊藤博文を暗殺した。日本当局はテロリスト、暗殺犯として安重根を処刑したが、韓国では長年“救国・独立の闘士”として敬意を表されてきた。

 その安重根も目立つ口ひげを最後まではやしていたことで知られる。

 だから、ハリス大使の口ひげを日本の朝鮮総督やかつての朝鮮半島統治と結びつける韓国側の非難はまったく説得力を欠くといってよい。このような韓国側の官民の理不尽な感情的反発のホコ先がハリス氏に不当にぶつけられているのである。この種の人格攻撃は明らかに人種差別、偏見であるといわざるをえないだろう。