それらの報道によると、韓国の各種活動団体や国会議員がハリス大使の最近の言動に反発し、「ハリス氏は母親が日本人なので韓国に対して特殊な反感を持っている」「ハリス氏の口ひげは韓国を弾圧した日本の歴代の朝鮮総督を思い起こさせる」といった類の非難を広げているという。

2020年1月13日、ソウルで開かれた「斬首競演大会」で米国が在韓米軍駐留費の負担増を要求していることを糾弾し、ハリー・ハリス駐韓米国大使のひげを切り離すパフォーマンスをしている場面(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 ハリス大使はこのところ韓国に対して、「在韓米軍駐留経費の負担増」「北朝鮮との交流拡大に関する米国政府との協議」「日本との間の軍事情報保護包括協定(GSOMIA)の堅持」などを求めてきた。いずれもトランプ政権の文在寅政権に対する要請であり、同大使は本国政府の求めを韓国側にそのまま伝えてきただけである。だが、同大使の軍人らしい率直な物言いなどが、韓国側から「横暴である」という批判を受けてきた。

トランプ政権が懸念を表明

 韓国では、とくにハリス大使の母親が日本人だという出自と口ひげを問題にして、同大使の肖像画を口ひげ部分から切り裂いたり、「日本人総督」という呼称をぶつけたりする攻撃が多くなった。

 この動きに対してハリス大使は1月中旬、ソウル駐在の外国記者団らに以下のような反論を述べた。

「私は日系米人ではあるが、あくまで米国の大使だ。私の出自を取り上げて非難することは誤っている。歴史の政治利用だともいえる」「私は海軍からの退役を記念して口ひげをはやすことにした」「韓国でも、民族独立のために戦った志士の多くが口ひげをはやしていた」

 トランプ政権も韓国でのこうした状況に懸念を表明している。国務省のモーガン・オータガス報道官は1月20日、韓国の中央日報のインタビュ―に応じて、「ハリス大使はポンペオ国務長官の完全な信頼を受けており、全世界に駐在する多数の米国大使のなかで最も偉大な大使の1人だ」と語った。