中国・成都で中国の李克強首相(右)と会談した韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領(2019年12月23日、写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 中国で日中韓首脳会談が開かれている。この会談で一層鮮明になったのが、韓国・文在寅(ムン・ジェイン)政権の中国に対する異様な屈従の姿勢である。文大統領の中国への接近や同調は、安全保障面で同盟国の米国から離反していくことをも意味する。韓国の中国傾斜は日本にも当然複雑な影響を及ぼすこととなる。

米国を非難し、韓国に同調させる中国

 文在寅大統領は中国の成都での中国や日本の首脳との会談に先立ち、12月23日、北京で中国の習近平国家主席と会談した。この中韓首脳会談では、両首脳が北朝鮮の非核化問題への対処を論じるとともに、習主席が「中韓関係の戦略的な発展」を強調し、文大統領がそれに同意した。

 また習主席は国際情勢に関して「多国主義」や「自由貿易」という言葉を再三提起した。明らかに米国のトランプ政権の対外政策への対抗であるが、文大統領はそれに対して同盟国である米国の立場を擁護しなかった。

 文大統領が米韓関係の絆にはなにも触れず、中国が提起する「戦略的な発展」に同意したことは、少なくみても米韓同盟の軽視であり、悪くいえば同盟からの離反、決別を意味するとさえいえる。米国にとっては、背信、裏切りといっても過言ではない。

 文政権のこの姿勢は、12月5日の中国の王毅外相の訪韓時でも明らかだった。王毅外相は文大統領と会談して、「国際情勢は単独主義と強権政治の脅威を受けている」と明確な米国批判を表明した。中韓関係については「対話と協力を強化し、多国間主義と自由貿易を守らなければならない」と述べ、やはり米国への非難に韓国を同調させる形となった。