4月初旬、筆者は支援物資とともに東日本大震災の被災地に赴き、被災者たちから生の声を聞いた。
津波から逃れた被災者たちはようやく再興に向けて動き出した。だが、現在彼らは厳しい現実に直面している。被災地では企業による従業員の大量解雇が始まっているのだ。このままでは働き手が現地から離脱し、復興のピッチが遅れるという悪循環につながりかねない。
パチンコ店盛況の矛盾
三陸の港町、宮城県石巻市。現地の知人に教えられ、筆者は幹線道路脇にあるパチンコ店をのぞいてみた。ライフラインが復旧した店は、地元民であふれかえっていた。知人によれば、避難所から足繁く通う地元民も少なくないという。
この現象を批判しようという意図は、筆者には全くない。大震災から九死に一生を得た被災者には娯楽が必要だ。プライバシーがなく、ストレスが溜まる一方の避難所生活の息抜きには、パチンコはもってこいだと思う。
ただ、津波被害が深刻だったこの街の大多数の地域は、依然として大量の瓦礫に覆われたままだ。震災前の街の姿を取り戻すためには、ゼロどころかマイナスからスタートせざるを得ない状況にある。
再興の第一歩である「街の瓦礫撤去」という難題があるにもかかわらず、現地の貴重な労働力が必要な場所に回っていない。この矛盾を解決する術がないことは、大きな問題なのではないだろうか。
被災者を臨時に雇う小さな村の試み
津波被害が深刻だった市内中心部に市役所がある。市役所の職員たちも市民同様に被災したが、通常業務への復帰と被災者支援に追われている。復興に向けた諸施策までは手が回らない状況だ(本稿執筆段階)。