企業の信用を貶めるのもサイバー攻撃の狙い
田原 怖いのは一番目と二番目の層だ。例えば一番上の層、政府の機関が関わるものってどういうサイバー攻撃なんです? 中国やロシアが、日本の省庁や政府に対して攻撃してくるんですか。
山田 少し前だと、政治家の方が靖国神社に参拝すると、必ずと言っていいほど、省庁のウェブサイトが改ざんされていました。中国語のメッセージが出てきたり、というものですね。この攻撃の主体は、中国政府ではなく、「ハクティビスト」と呼ばれる活動家たちですね。
田原 言ってみれば反日の活動家ですね。
山田 ただ背景には中国政府が控えている場合もある。省庁のホームページを改ざんする以外にも、いまでは企業を狙っておカネを盗んだり、評判を貶めたりということもしています。
田原 企業の信用を貶めるのに、中国政府が関わっているの?
山田 企業の信用はその国の国力にもつながっていますから。
田原 企業の信用を落とすにはどんな方法があるんですか。
山田 先ほど挙げた例のようにおカネを盗み出すのもそうですし、パスワードや個人情報、社員名簿なんかを公表してしまえば、それだけで「あの会社、大丈夫か」ということになって、株価が下がったりします。あるいは、知的財産をそっくり盗んで、それで相手の企業の力を削いでいく。そういう方法を取ることが多いですね。
だから米中貿易戦争の議論の中で、アメリカがずっと「中国は知的財産権を侵害している」って言っているのは、まさにこの問題なんです。
田原 中国がアメリカ企業の知的財産を奪っている。そして、その裏にはファーウェイという会社があるとトランプは主張している。ファーウェイはどういうことをしているんですか。
山田 端的に言えば、ファーウェイはアメリカの情報を盗んでいるんです。
田原 どういう風に?
山田 ネットを通じてハッキングすることもあれば、実際に社員をアメリカの企業に送り込んで情報を盗むこともあります。送り込まれた社員は、物理的に書類を盗む、自動的に情報を引き抜けるプログラムをアメリカ企業のコンピュータに紛れ込ませる、といった手法をとったりしています。
ファーウェイは2000年代にはアメリカに進出していますが、当時から裁判になるくらいアメリカの企業から情報を盗んでいました。2009年には、NSA(アメリカ国家安全保障局)が「この会社はどうもあやしい」ということで、ファーウェイのCEOである任正非さんを含む幹部を監視下に置いたんです。つまりハッキングしていたんです。