田原 その場合、被害を受けた側はどうなるんですか。

山田 被害を受けた側はやられっぱなしということになります。取られたら取られっぱなし。取られたことにもなかなか気づかないケースが多いです。

一流企業も大金を騙し取られている

田原 個人情報を取られた当人が気が付かなくても、具体的な損害は出るんですか。

山田 もちろんクレジットカードの番号が盗まれれば、損害を被ることになります。パソコンに入り込んだ他人が、どこかで買い物をすることができるようになりますから。

田原 なるほど。じゃあ、こういう犯罪で狙われた企業にはどういう被害が出るんですか。

山田 全く同じような感じです。

 例えばこういう手口です。取引先の社員に成りすました犯罪者が「この度、銀行口座が変わりました。今後はこちらに振り込んでください」という本物そっくりなメールを企業に送る。すると企業は取引先に支払うおカネを、その偽物の口座に振り込んでしまう。この方法で2年前、JALがとんでもない目に遭いました。

田原 どういう?

山田 3.8億円ものカネが奪われたんです。飛行機のリース料について、アメリカの金融会社に支払う予定になっていたところに、その支払い口座が変わりましたとメールが来た。そこでJALの担当者は何の疑いも持たずに、新たに指定された口座にカネを振り込んでしまった。後になって、そのメール自体がウソだったということが発覚したんです。

山田敏弘氏

田原 JAL以外の企業も被害に遭ったりしているんですか。

山田 遭っています。ただ、被害に遭った企業の人はそれを言いたがらないので、多くは表に出てきません。特に上場企業は株価や信用に関わってくるので、公表したがらないからです。それも犯罪者のねらい目です。