プロレスラーとしての川田利明。2008年4月、後楽園ホール(写真:平工幸雄/アフロ)

 先日の8日(日)、さわや書店青森ラビナ店は無事に開店一周年を迎えることができました。ひとえにお客様ならびに関係各位の皆様のお蔭です。ありがとうございます。

 私も前日に青森入りし、翌日の一周年記念フェアならびにイベント準備の手伝いをしました。この青森出張の楽しみのひとつは、なんと言っても「朝ラー」。青森では市場を中心に、朝から営業している食堂や蕎麦屋でラーメンを食べる、という文化が浸透してきたとのこと。起床したばかりの身体にラーメンは重いのでは、と危惧する方もいらっしゃるかもしれませんが、これがいけるのです。

 ご当地ラーメンの特長である煮干し風味が食欲を誘い、早朝の凍てつく寒さで凍りついた身体を芯から温めてくれます。一日の活力を得ることができる「朝ラー」、今回もお世話になりました。

レスラー・川田利明にフォールされてしまう!

 ところで電話帳の識別によるとラーメン店は、全国で約3万軒もあると言われています。そのほかにもファミリーレストランや居酒屋などラーメンを提供している店舗を加えるとその数は何倍にも膨れ上がります。

 出店のハードルが他の飲食店に比べるとハードルが低いとは言え、競争が激しいこの業界。そんな荒波にあえて挑んだ様子が綴られているのが『「してはいけない」逆説ビジネス学』(川田利明)。

 まずは「開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える」というサブタイトルに目を奪われる本書。

 通常は、失敗を重ねながらも人気店まで登りつめたストーリーが詰まっていて、読者に夢を与える構成にしがちなもの。ところが本書は、冒頭で「この本を読んで「こんなに大変なら、やっぱりラーメン屋になるのはやめよう」と思ってくれる人がいてくれたほうが、俺はいいと実は思っている」と言い切ってしまっているではありませんか。

 しかもページをめくると、各章の小見出しには、
あっという間に消えた1000万円・・・開業資金はいくらあっても足りない!
意地でも店を存続させるために・・・俺は全財産を失ってしまった
といったような過激な失敗談が並んでおり、冒頭の文章が決してミスリードではないことが分かります。

 これも美辞麗句を並べるよりも、自分の失敗談の数々を赤裸々に伝えることで、反面教師にしてもらいたい、という著者の願いが込められた結果です。これこそ、天才・三沢光晴、エース・小橋健太、いぶし銀・田上明との四天王プロレスにおいて、武骨なスタイルで存在感を発揮していたレスラー・川田利明の本領発揮ではありませんか。

 全日本プロレス時代のエピソードもときおり織り込まれていますが、著者の人柄もあり決して嫌味にはなっておらず、プロレスファンにとってもたまりません。読み終えると「麺ジャラスK」に食べに行きたくなること間違いなし。読者はみな川田利明にフォールされてしまうことでしょう。