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 言われてみて初めて気づく疑問、というのがある。よく考えてみたことはなかったけど、なるほど言われてみれば確かに不思議だね、と感じるようなものだ。

『誰が音楽をタダにした?』の著者スティーヴン・ウィットが本書を執筆したきっかけも、まさにそんな疑問から始まっていた。

“ってか、この音楽ってみんなどこから来てるんだ? 僕は答えを知らなかった。答えを探すうち、だれもそれを知らないことに気付いた。もちろん、mp3やアップルやナップスターやパイレートベイについては詳しく報道されていたけれど、その発明者についてはほとんど語られていないし、実際に海賊行為をしている人たちについてはまったくなにも明かされていなかった”

 まず、著者が抱いたこの疑問の説明から始めよう。

 僕は音楽をほとんど聞かないが、それでも「ナップスター」というサービスのことは知っている。アメリカのとある学生が、ネット上に散らばっているさまざまな音楽ファイルを検索しやすくしたサービスで、これによって音楽業界が破壊された、と捉えられていることも知っていた。

ナップスターが拾った音楽はどこにあった?

 それまで、ネット上のさまざまな場所に音楽ファイルは存在していたが、それらは、インターネットに関するある程度の知識を持つ人間が時間を掛けて探さなければアクセスできないものだったのだ。しかし「ナップスター」は、その手間を簡略化し、誰でもインターネットから音楽ファイルをダウンロードできるようにした。この「ナップスター」の登場によって、CDが壊滅的な被害を被った、という話は、一般によく知られているもののはずで、僕でも聞いたことがあるものだった。

 しかし著者は、ふと気づくのだ。そもそも「ナップスター」が探しやすくした「ネット上に散らばっているさまざまな音楽ファイル」は、一体どこから来たのか、と。