ピリカはこの調査結果を基に、いくつかの自治体や団体に課題解決の協力を依頼すべくアプローチしたところ、ことごとく無反応であったとのことです。当該自治体の首長がSDGs(持続可能な開発目標)のバッジを着けていても、です。

 不都合な真実に直面したときに、私たちの社会がどのような反応を示すのか。それは、社会の成熟度を端的に示していると感じます。

人工芝の施設をなくせと主張するだけでは

 今回の調査結果はマイクロプラスチックの流出経路の一部を明らかにしたにすぎません。その結果だけを見て「人工芝の施設をなくせ」と主張するだけでは、問題解決には至りません。まずすべきは、科学的根拠に基づく調査を行い、その結果を社会で共有することではないでしょうか。社会問題は、行政だけでも企業だけでも解決することは難しいでしょう。

 生活者たる市民も含めた社会全体が課題を認識すること、その上で対話を通じて問題解決の道筋を探ることが必要ではないでしょうか。

 今回取り上げたマイクロプラスチックの問題に関しても、まずは流出しているプラスチックは何なのか、それは私たちの生活や産業の中でどういう位置付けなのかを理解し、共有することが必要です。そのために行政に求めたいのは、情報発信と対話の場づくりです。持続可能な社会、より良い環境を次世代に残すために、こうした結果を受け止めることから始めてほしいと願っています。

 本調査にご協力いただいたほか、マイクロプラスチックに関する知見と情報を提供してくださったピリカと、小嶌不二夫社長(写真2)へ謝辞を述べさせていただきます。

写真2:調査にご協力いただいたピリカの小嶌不二夫社長

流出経路の可能性の一つが下水道

 マイクロプラスチックがどこからどのように海洋に流れているのか詳しいことは分かっていませんが、9割が陸上由来だという説があります。今回の調査はその流出経路と製品などを洗い出すことにありましたが、その際に流出経路の可能性の一つとしたのが「下水道」です。下水管を通ったプラスチックが、さらに下水処理施設を通り抜けているのではないか?と考えられるからです。